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メソッド

第5章-Ⅴ:トラウマ・過去の失敗にとらわれる苦痛│フラッシュバックとは?

2015年5月27日 Category:メソッド

※出来るだけ最初から順番にお読みください。

ふとしたシチュエーションで、過去の嫌な思い出やトラウマが蘇り、実際には今該当している状況ではなくても感情的なものまで噴き出してくる。

例えば誰かに注意された時に、親に怒られた瞬間がオーバーラップしたり、何かのイベントに参加しようとした時に以前の失敗を思い出して足が動かなくなるなど。

これらの様に過去の嫌な経験が、なんらかのきっかけで鮮明に蘇り、感情まで害してしまう事をフラッシュバックと言います。

過去に強いストレスを受けた場合や、精神障害、一部の発達障害に見られる傾向がありますが、実はそれほど特別なものではないのかもしれません。どんな方にも起こり得ることで、また特に自覚をしていないだけだったり……。

今回は時に衝動的な感情に走ったり、逆に立ちすくみ硬直してしまうなどの症状を起こす、フラッシュバックについてご案内します。

フラッシュバックとは?

フラッシュバックは上記の様に、ふとしたきっかけでその時の記憶と、その時の感情が鮮明に蘇る事をいいます。単に嫌なことを思い出す事ではありません。

多くの場合は強いストレスや感情的刺激の強い出来事がきっかけで強く残り、ひとつの事をきっかけに思い出すとそれを止められなくなったり、必要以上に自分を責めるなどのパターンが出来てしまいます。

虐待などの心身的な苦痛の記憶から、対人への認知にズレが生じていたりするケースや、人の前で失敗した時に実際はそうではないのに【笑われたに違いない・嫌われたに違いない】などの、自己評価に関わる認知のズレでも起こり得ます。

その時に表に出る反応は大きく2つに分かれます。

実際の状況とは別に、感情的・衝動的にフラッシュバックしているその瞬間を表に出す(外向)

フラッシュバックしている瞬間の感情に心を支配され困惑し、フリーズ(思考停止)や語を失う(内向)

繰り返すたびに思い出す回路が強くなり、より鮮明になっていったり、思い起こされるきっかけが広がる傾向もあるようです。

よく大きな事故や災害の後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)などでフラッシュバックが挙げられていますが、実際は実生活の対人関係の中など、ぱっと見のストレス規模の大きさに関わらず多少なり起きていてたりもします。

また、なんてことのない作業の間や、寝る前などに想い出が何度も何度も繰り返し襲ってくるなどがあり、記憶反響とも呼ばれていますが、これを繰り返し刺激が強く精査されていくことでフラッシュバック様な受け取り方になる場合もあるようです。

ちなみにアスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム当事者であったり、傾向がある子供の場合に【タイムスリップ】といわれる現象が起こることがあります。フラッシュバックの様に過去を鮮明に思い出して、まるで今しがたやったかの様に出来事を話しを始めるなどがあります。

自己と現実の認識が浅く、【時間が連続している】という概念が薄いために起こっているとも言われています。フラッシュバックと分けずに使われることも多いのですが、こちらは状況の認識など対応が異なる場合があります。

フラッシュバックの対処

フラッシュバックは脳の記憶処理の問題なので、処方などの薬物療法では対応できないことがあります。薬で記憶は消せませんので、薬物で出来る事は、そこに生まれる感情的な動きへの対処となるのが一般的ではないでしょうか。

また、【くよくよしやすい】などの人間性の問題ではなく、記憶の処理の問題と、認知の問題であるといった方が近いと思います。

時間のかかる対処になるのが一般的で、焦る必要はありませんが、直接的なアプローチの方法もあるのでご紹介します。無理のない範囲で目を通してみてください。

まず、何度も思い返してしまう記憶反響の対処ですが、応急処置的に行い、段々と薄くしていく方法があります。

こちらの記事で記憶反響の対処として有効なものが紹介されていました。
嫌な記憶を消す方法、イヤな過去の思い出の消し方|セラピールーム・ソラ

まず、記憶に対し、その映像をセピア~モノクロに加工。そしてモザイク(ぼかし)を掛け最終的に見えなくしてしまうというものです。※消えていく理由や詳細はぜひとも紹介元のサイトを御覧ください。

この方法は記憶を消すのではなく、思い出しても問題がないように加工していく技法です。この方法では難しい場合は【受け入れる技法】が必要になります。

受け入れる技法

フラッシュバックの元になりやすい記憶や、後で嫌な気持ちになりやすいシチュエーションを思い出します。できれば最初は【あの時の失敗は恥ずかしかった】など、簡単に因果関係を思い起こせそうな問題から着手します。

以下のような質問を書き出し、自問自答していきます(答えも書き込む)。

①:それはなぜ恥ずかしい(嫌)だと思ったのか?

②:理想の結果はどういうものだったか?

 

③:それは誰に向けての行動だったのか?

④:その相手にどう思って(反応して)欲しかったのか?

⑤:その行動にあった貴方の本当の欲求はなんだったのか?

おそらく①の段階で止まっていたことに気がつくことが多いのではないでしょうか?
第4章でご案内したとおり、人は何かしらの理由があって行動・選択しています。対人関係で失敗することの多くが【こうすれば、相手はこう動くだろう】と相手をコントロールしようとすることにあります。

例えば相手に理不尽な事をされて強く残っている場合、悔しさや怒り、恐怖がそこに残っています。これを受け入れ相手や状況を赦すなどはまず難しい。それこそ人間性を変えなければ無理なのではないか……という非常にややこしい問題になります。

【受け入れる技法】とは相手や出来事を受け入れるのではなく、その時に感じたあなた自身の【憤り】を受け入れるための技法です。

憤りは自分の欲求が満たされなかった時に溜まっていきます。例えば相手に理不尽な事をされた時に、相手に対して感じる嫌な想いの根源は【相手にこうあってほしい・こう扱って欲しい】などが裏切られた事による憤りです。

この憤りはストレスやショックを受けているその時は自覚しづらく、憤りのみに意識が向かいがちになります。【あのとき、ああしてくれなかった・ああされた】などです。これを埋めることは出来ませんし、過去に立ち戻って相手に訂正してもらうことも出来ません。

相手の言動への怒りは許せなくても、どうしてそこに怒りを生み出したのかが分かれば、憤りの理由が分かれば、無限に湧き出す苦痛を低減・回避することにつながります。

不快感の原因や理由が不明であれば【不安】になりますが、その理由が分かれば取り扱いが可能な“過去の出来事”でしかなくなるのです。

大きなストレスであれ、理不尽さの大きさがどうであれ、認知して選択・行動しているのは自分ですし、そのメカニズムに変わりがありません。

受け入れる技法は、自身の真の欲求や行動・選択の理由を明確にするものです。

実は憤りや不安、恐怖の側面として、混乱の裏側にあるのは【分からないものへの不安】がカギを握っていることが多くあります。そして対人関係に起こる問題の多くは、分離不安が関わってきます。

この分離不安に強く関わるのは、

人に認められたい(尊厳欲求)

安心したい(安全欲求)

思い通りにしたい(制御欲求)

などの欲求があり、さらにそれらの判断や権利を人に預けている場合に、強い分離不安になると言われています。
自分の欲求とそのために取った行動や、感じた物を理解することはこれらの欲求を他人から自分に戻し、その時の自分を受け入れることになります。

もし、理不尽がフラッシュバックを生むのなら、ほとんどの人が2~3歳時期までにそうなってしまうでしょう。そうでない人の方が多いということは、理不尽に対し、何らかの処理が完了していたと考えると見えやすくなります。

自分の欲求を理解することも納得のひとつです。相手(状況)ありきで起きていた現象であれば、これらに気がついていくことの方が近道になるのかもしれません。

次回はフラッシュバックの表面的な反応にも見られ、また、多くの場面で不安を強くしたり、現状や認知の自覚を阻む『フリーズ・パニック・癇癪』についてご案内します。

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