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第4章:自分の性格や人生を変える準備│選択とコントロール

2015年5月27日 Category:メソッド

※出来るだけ最初から順番にお読みください。

前章では認知や行動・選択を歪める可能性のある、メモリ解放の失敗や責任の個人化といった、余裕を奪う要因について触れました。

認知と現実のズレだけでも、解消できなければ人間関係を苦痛に感じたり、人生に息苦しさを感じやすくなる原因になります。

しかし、職場や家庭・夫婦関係、友人関係や恋人、果てはご近所付き合いから初対面の人との関わりに対し、本当に大きなねじれやすれ違いを生み出すのは認知のズレだけではありません。

───現実に問題を引き起こすのは、その時の行動を決める際の【選択】です。

無意識のうちに見栄や虚勢を張ろうとしてしまう・相手が傷ついているのを知っているのに止められない・大した事でもないのに抱え込んでしまう・気持ちと行動がチグハグになる……などなど。これらは人間関係で生きづらさを生み出すパターンです。

これらを【性格・人間性・運命・人生】の様な根拠の無い、生まれつきのものだと考えると、急に変えられない運命のような縛りに感じて、身動きがとれなくなるのもまたパターン……。

でも、もしかしたら、この選択はあらかじめ、あなた自身が軽い気持ちで選択しただけの、取るに足らない条件付けなのかもしれません。

この章では、時に認知すらも歪めてしまう【選択】の危険性と、人間関係での問題になりやすいポイントをご案内します。

選択理論

選択理論とはアメリカの精神科医ウィリアム・グラッサー博士が提唱している心理学です。発表から40年以上、カウンセリングや教育の現場、組織や家庭などの中で、人間関係の構築をより良くするために幅広く活用されています。

非常に人間関係の問題を分かりやすくする理論で、応用も利きやすいのが特徴です。

至極大雑把に説明すると

人は与えられた状況に流されて行動しているのではなく、自分の中で『~~だからこうする』などの動機から選択して行動している。関係においても同じで、相手に合わせて、自分で行動を選択している

という点が基本です。

自分の思考ややり方を変えられるのは不快に感じるものですが、これを無意識に相手に起こしていたり、相手からの言動の真意がここにあることに気がついていない場合、非常に息苦しくなります。

【こうすれば、相手はこう動くだろう】

【こうすれば、相手はこう言ってくれるだろう】

【こうすれば、相手はこう思ってくれるだろう】

【こうすれば、相手はこう印象を持つだろう】

これらは相手をコントロールするための選択です。そして、この【相手はこう~~だろう】の部分が、真の欲求でありながら表現をしていません。

【人はコントロール出来ない・変えられるのは自分】

これも選択理論の中で、最も重要といえる基礎の一部です。真意と行動がズレていればもちろん相手は思い通りには動いてくれません。このズレは憤りを生み、それが募ると相手への依存になったり、大きなフラストレーションになる危険性があります。

大人になっても変わらないこと

例えば子供がいたずらをした時、その母親が毎度近くにきて、文句を言いながらも手厚いお世話をしてくれたらどうでしょうか。

その子はいたずらを悪い事だと分かっていても、【こうすれば、母親はいつも近くに来てくれるはず】と考えるでしょう。選択理論で考えれば、他人をコントロールすることは出来ないというのが真理ですが、人間には物事をコントロールしたいと考える【制御欲求】も存在しています。

だから、この子供が相手をコントロールする選択肢を学習したことは、人間性や性格の問題ではありません。因果関係をそのように結びつけようとするのは、人という生き物の仕様です。

しかし、もし、この子供がこの因果関係に学んだ一方的なコントロールの方法を止めてもらえず、自分の中で肯定的にとらえたまま成長していったら? そうして大人になった時に、誰かの気を引きたいと考えたら、彼はどういう選択をとるでしょうか?

もしかしたら、関心を引きたい相手に対し、わざと不快な事をしたり、人と逆の事をする自分を誇示する様な、選択・行動の傾向を持つかもしれません。

これはあくまで例で、人それぞれ星の数ほどの想定があるわけですが、意外と極端な例えでも、大きく外れている例でもないのではないかとと思います。

彼はおそらく自分でも【どうして自分がこうしたいと思ってしまうのか解らない】のではないでしょうか。

時折、自分や周囲に対して不利益な行動だと分かっていながら、“どうしてもこうしちゃう。こういう人間なんだよね”と開き直ってしまう方がいますが、罪悪感が多少軽くなったとしても、自分を理解し不安感を持たない様にできるほどは納得出来ないでしょう。だからあえて言葉にして誤魔化そうとしてしまう。

ここでも認知と現実がズレているからです。そして、その根本の原因の記憶が古くて劣化しているため、人はこういう場合、どこか手の付け所のないような不安感として処理してしまう傾向にあります。解らない事が不安になるのです。

【こうすれば、相手はこう動くだろう】

言葉を上手く操れない幼児期は、こうした行動の積み重ねで関係を知って行ったり、社会を理解する事が多くなるものです。これは社会性獲得への選択肢の学習です。

ただし、その選択肢が正しいとは限らず、状況に応じて選択を見つめなおす必要が出てくることは、生物として当たり前の営みではないでしょうか。

この営みを邪魔しているのが、コントロールしたいと願う制御欲求や、自己評価に関わる出来事に対して、マルかバツかと極端に受け取ってしまっている時の心理だったりします。

イメージ的にこうした過去に原因のあるものは直せないと思われがちですが、実は意外とそれほどでもなかったりします。選択肢の生まれた理由を思い浮かべ、そうしてまでして欲しかった本当の欲求を特定し、その選択を変えればいいだけです。

人間性や性格などを変えるような問題ではありません。知ることがほぼ9割の解決策となると表現しても言い過ぎではないと思います。

コントロールと劣化した想いを探る

自分が何かしらのコントロールをしようとして、人間関係に停滞が起きているのかもしれない。

それをいきなり実生活で見つけながら行動するのは困難です。

まずは過去の自分を振り返り、思い出そうとすると自分が嫌だなと思うタイプの問題を書き出します。

失敗して恥ずかしかった思い出、余計な一言で傷つけてしまった思い出、出しゃばらずにおけばいいものを前に出て失敗した思い出、やっておけばよかったのにその時には動けなかった後悔の思い出、勇気を出しての告白が通じなかった思い出……などなど

ちょっとキツイですが、これをのぞき見る事のできる、エスパーの様な他人はいないので安心してください。のた打ち回りたくなる想いをグッと抑えましょう。

次にその失敗に対し【どうして嫌だと思うのか?】を当てはめていきます。

恥ずかしいから⇒どうしてそう思う?

悔しいから⇒どうしてそう思う?

悲しいから⇒どうしてそう思う?

自分が許せない⇒どうしてそう思う?

相手が理不尽だ⇒どうしてそう思う?

この【どうしてそう思う?】に対し、次の様な【他人の印象や行動コントロール】の視点がないかを確認します。

他人からの好評価の期待

低評価を認めたくない

相手が思い通りに動かなかったから

相手に見て欲しい理想的な自分でないから

一度認識すると、“解らない事が不安になる”点が解消でき、それだけで肩の荷が降りて楽になる場合があります。ここまでの流れがなんとなく掴めれば、寝入りの時などを利用して、浮かんでくる想いや過去の言動に、同じ流れを当てはめて受け流してみてください。

世の中、想像以上に人に対して、何かを張る必要のない項目が溢れているか分かるかと思います。

選択理論で言う所の選択や、コントロールについての概念があると、日記や小メモ帳法の時のように、自分の認知や取った選択の方向性がつかみやすくなると思います。そして、この受け流していく意識を持つと、こんな感覚に気がつくかもしれません。

【相手をコントロールできないのなら、それは自分の意図にとって良くも悪くも、自分のとった行動は自分が思っている以上に、今現在、相手には気にも求められていないような、取るに足らないことなのではないか?】

人は『取るに足らないこと』では動きません。相手がしっかりと必要を訴え、それに自分が応じる意味を見つけられなければ動きません。

相手がその意味を見つけていても動いてくれない時は、それはどうしても動いてはくれません。あなたの意思が自由であるように、相手の意思もまた自由なのです。

そこを感情的にでも押し切ろうとしたり、一方的に理解を迫るのはコントロールです。

この観点を持つと、『気を引くために~~する』という周りくどいコントロールから、『こっちを見て欲しいと直接的な言葉にする』などの、認知や欲求にストレートな方式への方向転換は、誰にも咎められずに、口に出して実行しても許される自由な事だと肯定しやすくなるのです。

また、自分の欲求もキープしながら、他人のコントロールを受け流す余裕を生み出すための視野の広さにもつながります。

ここで間違えてはいけないのが、相手が応じてくれない場合、『では、我慢しろ』ではないということ。その行動・選択では相手が応じないというだけです。我慢をして自分を抑えることや、相手を立て続けることは、憤りを生み続けます。

逆に相手が一方的もしくは、関係性の上下を取るために応じないといった姿勢の場合は、それは相手からのコントロールです。そこにある真意を正しく見極められれば、そこに感じた【理不尽】を軽減させられる事があります。

※この関係性の上下などのコントロールについては、後々の【第6章:人のせいばかり・自分のせいばかり│憤りとは?】で詳しくご案内します。

ここまでくれば、相手と関わる時に【自分はこういう風にコントロールしようとする傾向があるからな……】と最初に意識するだけで、息苦しさを感じるパターンは回避しやすくなります。

同時に、普段の行動が性格や人格などの変え難いものではなく、選択を変えれば良いのだと気がつくはずです。

時折、気持ちを相手に言わずに動いてもらおうと躍起になり、傷つきながらも『それでも相手に察して動いて欲しいと思ってしまう』という方がいますが、それこそが『相手に理解されたい』という【承認欲求(認められたい・理解されたい)】を満たすために、相手を思い通りに動かす制御欲求の現れです。

人はコントロールできないのです。そして、今は良くてもその関係は対等ではなく、欲求解消の場でしかないので、完全に満たされることもありません。やがて歪みが生まれ、些細なきっかけで関係が崩れるなどのリスクをはらんでいます。

次の章からは数回に渡り、認知と行動・選択がズレていた時に起こる、【特性】と言われるような行動様式を、ここまでの章の観点からひとつひとつ解説していきます。
次章のテーマは【完璧主義】です。

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